一覧に戻る

長野県助産師会通常総会が無事終了いたしました。

会長挨拶

 

今回の通常総会では諏訪地区の壬生 正子 氏に、45年の助産師人生を振り返り、助産師として歩んでこられたこれまでの経験をお話頂きました。

「楽しんでいますか助産師の仕事」~45年の助産師生活から気付いたこと、伝えたいこと~

講演者:諏訪地区 壬生 正子 氏

 

壬生さんの講演風景

講演の概要

最初に就職した病院では素手で分娩介助をする時代で、肝炎になったことも…。その後、開業医で長きに渡り勤務されました。助産師2人、医師1人という少ないスタッフで当直を行いながら、5000件の分娩を経験され、親子二代の分娩介助もされました。たくさんのお産に向き合うなかで、分娩台に仰向けになり、足を固定され、まぶしいほどのライトに照されとても無防備な姿勢での分娩に疑問を持つようにったと言われました。それから文献などを参考に、畳での自然なお産に挑戦されました。分娩台から産婦を解放するということを。まず、足の固定を止め、ライトを暗くし、児の吸引を止めたそうです。医師の様子も伺いながら、次は畳でのお産を決行されました。あいている畳と、ソファーとカーテンで仕切っただけの空間でしたが、産婦はパニックになることなく、産まれた児はおとなしく目を明け母をみつめていたそうです。畳でのお産を決行するときに最も大変だったのが、医師の理解を得ることでした。医師は、畳でのお産は時代と逆行していると感じ、また異常時の対応についての不安があったそうです。しかし、産婦が出産後に「先生ありがとうございました。」というと医師は何も言えなかったようです。異常がなかったことで、医師も許してくれました。また、分娩だけでなく、母乳育児でも挑戦されました。哺乳量測定を止め部屋での自立授乳を行いました。児の泣き声が授乳のサインなので、夜はそれまでよりも部屋を回り授乳をみたそうです。平成に入り、10代の中絶が増え、中学校などで命の授業や、講演会などにも力を入れて活動されました。
その後、56才で開業し今年で12年目を迎える助産院では、母乳育児支援を中心に、地域でお母さんたちを支えています。母乳で育てたいと思ってるお母さんたちに、ミルクを減らす取り組みをされています。「私のおっぱいは足りない」「体重の増えが悪いとビクビクしている」「児がおっぱいに吸い付けない」と思い来院される方が多いそうです。
最後に、分娩が施設で扱われ医療で管理されるようになって失われたことは、女性の産む力、育てる力、児の生まれる力、育つ力と話されました。母児に温かく寄り添い、安心できる環境に置くこと、それがより安全なお産につながり育児もスムーズに始まるということでした。助産師は、データに囚われず、人間臭く、目線を低くしてお産や育児に向き合うことが必要だと話されました。